
覚えている限りの、古い記憶。
記憶を一つずつ遡ってゆき、甦る幼い記憶達。
大きなタイヤや流木が流れつく、広い砂浜。
もたもたと一歩ずつ進み、波が打ち寄せる少し手前で座り込んで見た、眼前に広がる曇り空とグレーの海。
その時驚くほどに切ない気持ちが襲ってきた。
自分の手の届く範囲のなかで、人工物に囲まれて生きていた私に取って、想像すらしていなかった広く大きな世界。
はじめて私は「自分」という小さな個の存在を自覚した。
近所の公園で砂遊びをしながら、恐らくはじめて作ってみたであろう、泥団子。
夢中で握り、地面に並べては母に得意気な眼差しを向け「上手」と言わせた。それから物心つくまで、内緒で続けた一人遊びの泥団子。
ボコボコの歪なかたちから、まん丸で真っ黒な団子作りへと変貌してゆく。
私にとって、土は好奇心の象徴となった。
遠足で行った森の中で肌に触れる、ひんやりとした空気。
公園を裸足で走った時の、刺さるような芝生の感触。
木登りをした時に掌で掴む、ざらざらとごつごつ。
あの時の、あの瞬間の感触が結びつける、記憶の風景。
気が付けば、今はそうした記憶達と再び出会い、離島での暮らしに興じている。
自然との結びつきそのものが、ものづくりへ向かおうとする衝動の原点なのだ。
自然との距離が近い場所で、豊かさの本質を見つめ直し、未来の子供達やこの星に、大切な何かを残せる活動を一つひとつ紡いでゆきたい。
ヒトも自然。
自然を引き寄せ、寄り添いながら、未来の誰かの記憶の糧となるために――
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